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2024.09.07 情報セキュリティ

ISMSにおける物理的管理策で対応すべきポイント

**ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)**は、組織が情報セキュリティを管理するための包括的なフレームワークであり、情報の機密性、完全性、可用性を維持することを目的としています。情報セキュリティと聞くと、技術的な対策やサイバー攻撃への対応が中心に思われがちですが、物理的なセキュリティ管理も極めて重要です。物理的管理策を怠ると、建物内での不正な侵入や盗難によって、情報漏洩やシステムの破壊が生じるリスクが高まります。

この記事では、ISMSにおける物理的管理策で対応すべき重要なポイントについて解説します。

1. 物理的なセキュリティ境界の確立

ISMSでは、まず組織が扱う情報資産を物理的に保護するためのセキュリティ境界を明確に定義する必要があります。セキュリティ境界とは、物理的なスペース(建物、フロア、部屋)を特定し、その内部でセキュリティ管理を行う範囲を示すものです。この境界を明確にし、アクセスを制限することで、不正侵入を防ぎ、重要な情報資産の保護が可能になります。

  • アクセス可能エリアの分類
    組織内で、一般エリア、管理エリア、制限エリアなどのように、アクセス制限のレベルに応じてエリアを分類します。例えば、サーバールームやデータセンターなどの情報資産が保管されている場所は、制限エリアに分類され、限られた職員しか入室できないようにします。
  • 物理的な防壁の設置
    セキュリティ境界内の特定エリアに対して、ドアやゲート、セキュリティカメラ、フェンスなどの物理的な防壁を設置し、不正なアクセスを防ぎます。また、窓や通用口など、外部からの侵入が可能な場所には、鍵の設置や監視体制を強化することも重要です。

2. アクセス制御の徹底

アクセス制御は、物理的なセキュリティ対策において中心的な役割を果たします。物理的な場所へのアクセスを許可された者のみが可能にし、アクセス権限を厳密に管理することで、機密情報や重要なシステムへの不正アクセスを防止できます。

  • アクセス権限の付与と管理
    アクセス権限は、業務に必要な範囲でのみ付与するべきです。全ての従業員が全エリアにアクセスできる状況は避け、職務ごとに必要なエリアのみアクセス可能にします。特に、サーバールームやデータ保管エリアなどの高リスクエリアへのアクセスは、業務上必要な担当者のみ許可し、定期的に権限の見直しを行います。
  • 入退室管理システムの導入
    カードキーや指紋認証、顔認証といった生体認証システムを用いた入退室管理システムを導入することで、不正なアクセスを防ぎ、誰がいつどのエリアにアクセスしたのかを記録します。これにより、物理的な侵入や内部の不正行為があった場合にも、迅速な追跡が可能です。
  • アクセスログの保持
    アクセスログを定期的に監視し、異常がないかを確認することも重要です。特に、通常業務時間外に不審なアクセスがあった場合には、速やかに対応できる体制を整えておく必要があります。

3. 設備や機器の物理的な保護

情報資産だけでなく、それらが保存されている設備や機器自体を物理的に保護することも、物理的管理策の重要な要素です。サーバー、ストレージ機器、バックアップ機器などは、盗難や破壊から守るために適切に管理されるべきです。

  • サーバールームのセキュリティ
    サーバールームやデータセンターは、厳重なセキュリティ対策が必要です。これには、アクセス制限の徹底、監視カメラの設置、そして二重扉やセキュリティゲートなどの多層防御が含まれます。また、設備の温度管理や防火対策も重要です。高温や火災によって機器が破壊されるリスクがあるため、空調システムや消火設備を適切に整える必要があります。
  • 機器の盗難防止策
    小型の機器や携帯デバイスは、特に盗難リスクが高いため、保管場所に注意し、必要に応じて施錠付きの保管庫を利用することが推奨されます。また、ノートパソコンなどの持ち運びが可能な機器には、物理的な固定具を取り付けることで、盗難リスクを低減します。

4. 環境的要因への対策

物理的管理策では、環境的なリスクにも対処する必要があります。火災、地震、洪水などの自然災害や、停電などの突発的な事故は、設備やデータに大きな被害をもたらす可能性があります。これらのリスクに対する準備も、物理的管理策の一環として考えるべきです。

  • 災害対策
    火災対策としては、火災報知器や消火器、スプリンクラーなどの設置が必須です。データセンターやサーバールームには、通常の水ではなく、電子機器に影響を与えないガス系消火システムを導入することも推奨されます。また、地震対策としては、サーバーラックや機器を固定するための耐震装置を導入することが重要です。
  • 停電対策
    停電が発生した場合でも、データやシステムを保護するために無停電電源装置(UPS)を設置し、停電後も短時間であればシステムを運用できるようにします。さらに、長期的な停電に備えて、バックアップ電源として発電機の導入も検討すべきです。

5. 監視と監査の強化

物理的な管理策が適切に運用されているかどうかを確認するためには、監視と監査が欠かせません。これにより、潜在的な問題点を早期に発見し、適切な対応策を講じることができます。

  • 監視カメラの設置
    監視カメラは、重要なエリアや設備周辺に設置し、常時監視することで、不審な活動や異常がないかを確認します。監視カメラの映像は一定期間保存し、必要に応じて確認できるようにしておくと、事後の調査にも役立ちます。
  • 内部監査の実施
    定期的に内部監査を行い、物理的管理策が実際に運用されているかどうかを確認します。監査結果をもとに、改善が必要な部分があれば、速やかに対策を講じます。特に、アクセス制御や入退室管理の適正運用、環境リスク対策の有効性を重点的に確認することが求められます。

まとめ

ISMSにおける物理的管理策は、情報資産を保護し、組織のセキュリティを高めるために欠かせない要素です。物理的なセキュリティ境界の確立やアクセス制御の強化、設備や機器の保護、環境リスクへの対策など、総合的な取り組みが求められます。また、監視と内部監査を定期的に実施し、物理的管理策の運用状況を常に確認・改善することで、情報セキュリティ体制の強化を図ることが可能です。これらの取り組みを継続することで、外部からの脅威だけでなく、内部のリスクからも情報を守ることができます。

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