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2024.09.16 ISMS

ISO 27001:2022で求められる職務の分離について

ISO 27001:2022では、情報セキュリティを確保するために「職務の分離(Segregation of Duties)」が重要な要素として求められています。職務の分離とは、組織内で特定の業務や役割を複数の担当者に分けて割り当てることで、一人の担当者が全ての権限を持つことを防ぎ、リスクや不正行為を最小限に抑える仕組みです。この仕組みは、特に機密情報の取り扱いやシステム管理など、セキュリティ上重要な役割を担う組織において、リスク管理の観点から不可欠とされています。

1. 職務の分離の目的

職務の分離の主な目的は、不正行為やミスの防止、そしてセキュリティリスクの低減です。一人の担当者がすべての業務フローを管理する場合、意図的または無意識のミスや不正が発生しやすくなります。例えば、同一人物がデータの入力、承認、処理をすべて行うと、誤りや不正を発見しにくくなるため、リスクが増大します。職務を分離することで、チェックアンドバランス(相互監視)が働き、不正行為を未然に防ぐことが可能になります。

さらに、情報セキュリティにおいては、機密情報へのアクセス権やシステム管理権限が適切に制限されていないと、内部からの情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが増加します。そのため、ISO 27001:2022では、職務の分離を通じてリスクを軽減し、セキュリティ体制を強化することが求められています。

2. ISO 27001:2022における職務の分離の具体例

ISO 27001:2022で求められる職務の分離は、特に以下のような業務に対して実施されるべきです。

  • システム管理者とデータ管理者の分離:システム管理者は、システムの設定や保守を担当しますが、データ管理者とは異なる権限を持つべきです。システム管理者がデータに直接アクセスできないようにし、データの改ざんや不正なアクセスを防止します。
  • 取引の入力と承認の分離:財務システムや取引処理において、取引の入力と承認を同一人物が行わないようにします。これにより、不正な取引や不正なデータの操作を防ぐことができます。
  • セキュリティポリシーの策定と実施の分離:セキュリティポリシーを策定する役割と、そのポリシーに従ってシステムを運用・監視する役割を分離することで、政策と運用が独立し、バランスの取れたチェックが行えるようになります。

このように、役割を分けることによって一人の担当者が組織の情報やシステムに対して過剰な権限を持つことを防ぎ、組織全体でセキュリティを確保する体制が整います。

3. 職務の分離を実現するための手法

ISO 27001:2022では、職務の分離を実現するために、組織の規模や業務内容に応じた適切な分離手法を導入することが推奨されています。以下のような手法が有効です。

  • アクセス制御の実施:システムやデータにアクセスする権限を厳格に管理し、必要な担当者だけが特定のデータやシステムにアクセスできるようにします。役割に応じたアクセス権の割り当てを行い、不必要な権限を持つことを防ぎます。
  • ワークフローの設計:業務プロセスを設計する際に、重要な業務は必ず複数の担当者が関与する仕組みを組み込みます。例えば、承認プロセスを二重チェック制にする、監査役を配置するなどの対策が考えられます。
  • 定期的な監査とレビュー:職務の分離が適切に実施されているかどうか、定期的に監査やレビューを行うことが重要です。特に、アクセス権の見直しや業務プロセスの変更が適切に反映されているか確認します。

4. 職務の分離の課題と対策

職務の分離を徹底することには、いくつかの課題も存在します。特に中小規模の組織では、人員が限られているため、役割を分離することが難しい場合があります。このような場合には、技術的な手段を活用することが有効です。例えば、業務プロセスの一部を自動化することにより、人員の負担を軽減しつつ、分離の原則を維持することができます。

また、職務分離に関する規定や手順を文書化し、全社員に対してその重要性を教育することも、円滑な実施のためには欠かせません。

まとめ

ISO 27001:2022における職務の分離は、組織の情報セキュリティを強化するために重要な要素です。リスク管理と内部統制の向上を図るため、業務や権限の分離を適切に行うことが求められます。これにより、不正や誤りのリスクを最小限に抑え、セキュリティインシデントの発生を防止することが可能となります。

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