ISO/IEC 27001は、情報セキュリティ管理システム(ISMS)の国際標準規格であり、組織の情報資産を保護するためのさまざまな管理策を提供しています。その中でも「情報の分類」は、情報資産を適切に保護するための重要なステップです。この管理策は、組織が保有する情報を分類し、それぞれに適切な保護レベルを設定することで、情報漏洩や不正アクセスのリスクを軽減することを目的としています。
1. 情報の分類の目的
組織内にはさまざまな種類の情報が存在しますが、それぞれが同じレベルの保護を必要とするわけではありません。たとえば、機密性の高い顧客データや経営戦略情報は、公開されているマーケティング資料とは異なるセキュリティ対策が必要です。情報を分類することで、どの情報がより厳格に保護されるべきか、どの情報が比較的緩やかな対策で済むのかを明確にすることができます。
このプロセスにより、セキュリティ対策が過剰でも不足でもなく、効率的かつ効果的に運用されるようになります。また、情報の分類は、法令や業界規制に準拠するための基盤にもなります。
2. 情報の分類方法
ISO 27001における情報の分類は、主に機密性、完全性、可用性という3つの観点に基づいて行われます。この「CIAトライアングル」とも呼ばれる概念は、各情報がどの程度の保護を必要とするかを決定する基本です。
機密性(Confidentiality): 情報が許可された者だけにアクセスされることを確保する要素です。機密性が高い情報には、アクセス制御や暗号化などの強固な対策が必要です。
完全性(Integrity): 情報が正確で改ざんされないことを保証する要素です。完全性が求められる情報には、変更履歴の管理やデータの冗長性の確保が重要です。
可用性(Availability): 必要なときに情報が利用できることを確保する要素です。可用性が重要な情報には、バックアップの確保や災害対策(DR)計画が必要です。
これらの要素に基づいて、情報は以下のように分類されることが一般的です。
公開情報: 社外にも公開されている情報。セキュリティ対策はほぼ必要ない。
内部情報: 組織内で共有されるが、社外には公開されない情報。中程度の保護が必要。
機密情報: 一部の権限を持つ者のみがアクセスできる情報。強力な保護対策が求められる。
極秘情報: 最も高い機密性が要求される情報。特別なセキュリティ対策が必須。
3. 情報分類のプロセス
情報を分類するためには、まず組織が保有するすべての情報資産を特定し、リストアップする必要があります。その後、各情報の機密性、完全性、可用性に基づいてリスク評価を行い、適切な分類を決定します。具体的には以下のステップで進行します。
1. 情報資産の特定
組織内で扱われている情報資産をリストアップし、その内容や重要度を明確にします。
2. リスク評価
各情報資産に対して、機密性、完全性、可用性の観点からリスクを評価します。例えば、機密情報が漏洩した場合の影響を分析し、適切なリスク対応策を講じます。
3. 情報分類
評価に基づき、情報資産をそれぞれのリスクレベルに応じたカテゴリに分類します。例えば、極秘情報は最高のセキュリティ対策が必要であるのに対し、公開情報は最も軽い対策で済みます。
4. ラベリングと取扱いルールの設定
各分類に従って、情報資産にラベルを付け、取り扱いのルールを設定します。これには、アクセス権限、保管方法、廃棄方法などが含まれます。
4. 情報の分類とその維持
情報の分類は一度行えば終わりではなく、定期的に見直す必要があります。業務の変化や新しい情報の追加、リスク環境の変化に応じて、分類基準や保護対策を更新することが重要です。また、従業員に対する定期的な教育を実施し、正しい情報の取り扱い方法を周知徹底させることも不可欠です。
まとめ
ISO/IEC 27001における「情報の分類」は、組織が持つさまざまな情報資産を効率的かつ効果的に保護するための基本的な管理策です。情報を正しく分類し、それぞれのリスクに応じた保護対策を講じることで、情報漏洩や不正アクセスのリスクを大幅に軽減できます。また、定期的な見直しと従業員教育により、組織の情報セキュリティ体制を強化し、持続的なセキュリティ管理を実現することができます。