INFORMATION お役立ち情報

2026.02.19

【徹底解説】サプライチェーンセキュリティ評価制度の構築方針とは?企業に求められる対応と今後の展望

かつてサイバーセキュリティは「自社の門番を固めること」と同義でした。しかし、現在その常識は通用しません。攻撃者は、セキュリティが強固な大手企業を直接狙うのではなく、その取引先である中小企業や海外拠点、あるいはソフトウェアのサプライヤーを「踏み台」にして侵入するからです。

2024年から2026年にかけて、日本国内でも「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の構築に向けた議論が加速しています。これは単なるガイドラインの提示に留まらず、企業が取引先を選ぶ際の「客観的な物差し」を作る国家的プロジェクトです。本記事では、その制度構築の背景から、海外の先行事例、そして日本企業が直面する課題までを深掘りします。


1. 深刻化するサプライチェーン攻撃の実態

制度の必要性を理解するために、まず近年の被害事例を振り返る必要があります。攻撃の糸口は、常に「最も弱い環(わ)」に向けられています。

  • 大手自動車メーカーの稼働停止: 仕入先のシステムがランサムウェア攻撃を受け、部品供給が滞ったことで国内全工場が停止。数日の停止で数百億円規模の損失が生じた例もあります。
  • ソフトウェア・サプライチェーン攻撃: 広く普及している管理ソフトやオープンソースライブラリに悪意あるコードが混入され、それを利用する数万社が芋づる式に被害に遭うケース。
  • 保守運用ルートの悪用: システムメンテナンス用の回線を介して、委託先から委託元へウイルスが拡散するケース。

これらの事例に共通するのは、「自社の対策だけでは防げない」という点です。そのため、サプライチェーン全体を一つの生命体として捉え、各部位(企業)の健康状態(セキュリティレベル)をチェックする制度が必要になったのです。

2. 海外の先行事例:米国の「CMMC」という衝撃

日本が構築しようとしている制度には、先行する海外のモデルがあります。最も影響力が大きいのが、米国国防総省(DoD)が導入したCMMC(Cybersecurity Maturity Model Certification:サイバーセキュリティ成熟度モデル認証)です。

CMMCの特徴

  • 「自己宣言」の廃止: 従来の自己申告ではなく、第三者認証機関による審査を義務化。
  • 階層的なレベル分け: 扱う情報の重要度に応じて、求められる対策レベルが変動。
  • 「認証なし=取引不可」: 認証を持たない企業は、米国防省関連の入札に一切参加できないという強力な強制力。

日本国内でも、防衛産業や重要インフラ分野を筆頭に、このCMMCに近い厳格な評価制度の導入が検討されています。これは、グローバルサプライチェーンから日本企業が排除されないための「国際標準への準拠」という意味合いも持っています。

3. 日本における制度構築の「4つの方針」

経済産業省や「サプライチェーン・サイバーセキュリティ・コンソーシアム(SC3)」で議論されている構築方針は、以下の4点に集約されます。

① 評価基準の標準化と「可視化」

現在、多くの企業が独自の「セキュリティチェックシート」を取引先に送付していますが、これは回答側・回収側双方にとって大きな負担です。これを解消するため、「NIST CSF(サイバーセキュリティフレームワーク)」などの国際基準に基づいた共通の評価指標を策定します。

② 継続的モニタリング(スコアリング)の導入

セキュリティ状態は日々変化します。一年に一度のアンケートではなく、外部からドメインやIPアドレスをスキャンして脆弱性を評価する「セキュリティ・レーティング」技術の活用が検討されています。これにより、リアルタイムに近い形で供給網の健全性を把握します。

③ 経済安全保障との連動

2022年に制定された「経済安全保障推進法」に基づき、基幹インフラにおいて、信頼できない国や組織が製造した機器を排除する動きがあります。評価制度は、この「信頼性の確認」を実務レベルで支える基盤となります。

④ 中小企業への「伴走型支援」

厳格な制度を作っても、中小企業が脱落してはサプライチェーンは崩壊します。簡易診断ツールの提供や、専門家が駆け付ける「お助け隊」との連携が強化されています。

4. 制度導入によって変わるビジネスの商流

この制度が本格運用されると、B2Bビジネスのルールは激変します。以下の比較表をご覧ください。

項目 従来(2020年頃まで) 制度構築後(2026年以降)
選定基準 品質・価格・納期(QCD) QCD + セキュリティ格付け
責任範囲 契約した当事者間のみ n次請けまでの透明性
監査手法 紙のチェックシート 第三者認証・外部スキャン

5. 今すぐ着手すべき「3ステップ」のアクションプラン

制度の完全義務化を待っていては手遅れになります。今、経営層が主導して取り組むべきは以下の3点です。

  1. 重要資産と供給網の棚卸し: 自社のビジネスにおいて「何が止まると致命的か」を定義し、その業務に関わる外部ベンダーを全てリストアップします。
  2. 現状のギャップ分析: 自社の対策が「NIST CSF」等に対してどの程度不足しているかを、ツールや専門家の診断で明らかにします。
  3. 契約の見直しと対話: 取引先との契約に「インシデント発生時の報告義務」を明文化し、共にレベルアップする姿勢を持ちます。

結論:セキュリティは「コスト」から「参入障壁」へ

サプライチェーンセキュリティ評価制度は、一見すると負担に思えますが、実は「高い評価を得ることは、競合他社が容易に真似できない営業優位性になる」というチャンスでもあります。2026年、日本の産業界は「信頼の可視化」という新しいフェーズに入りました。この変化を先取りし、自社のセキュリティレベルを「無形資産」として磨き上げましょう。

さらに詳しく知りたい方へ
「自社の業界に特化したチェック項目が欲しい」「自動診断ツールの詳細を知りたい」などのご要望があれば、お気軽にお問い合わせください。専門のコンサルタントが貴社の供給網強化をサポートします。

CONTACT お問い合わせ

お電話、お問い合せフォームから随時ご相談を受け付けております。
事前のご予約で、夜間・土日祝日でも対応可能です。

\ 事前のご予約で、夜間・休日も対応可能 /

06-6355-4788

営業時間:9:30~19:00定休日:日曜日